【著作権】

楽曲のパクリの判断(パート2)

こんばんは。

前回は、音楽のパクり事件での第1争点「楽曲の同一性・類似性」について解説するとともに、「オジーの“Zombie Stomp”がArmored Saintの“Tribal Dance”に対して、パクリの問題になるか?」について問題提起しました。

本日は、音楽のパクり事件での第2争点「楽曲の依拠性(いきょせい)」について簡単に説明するとともに、曲をパクった人を訴える場合に、どのようにして「依拠性」を証明するかについてお話をします。

著作権法の「依拠性」とは、ザックリ言えば、既存の著作物を元にして、著作物の創作又は利用したかどうかのことです。

ただ、パクった側が、既存の著作物を元にしたかどうかの証明は難しく、パクった側が、「この曲をパクりました」と正直に認めることはあり得ないので、実際の裁判では、既存の著作物を見たり、聞いたり、入手できるなどアクセスできたかどうかによって、「依拠性」の有無が判断されます。よって、裁判では、「既存の著作物を知らないわけがない」という心証を裁判官に抱かせて、「依拠性」があると認めてもらうように、既存の著作物にアクセスできたことを証明・推認する証拠を提出します。

既存の曲にアクセスできたかどうかを証明・推認させる証拠として、例えば、以下の証拠が提出されることがあります。

  1. パクった側がパクられた側のアルバム・CDを所有していることを示すような証拠
  2. パクった側がパクられた側のライブ等で演奏を観たことを示すような証拠(e.g., 同じスタジオでレコーディングをしたこと、同じフェスに参加したこと)
  3. パクられた曲のアーチストを良く知っていることを示すような証拠(e.g., 同じレーベルに所属していること、プロデューサーが共通する等の共通の人脈)
  4. パクられた曲が非常に有名な曲であって、知らない人がほとんどいないことを示すような証拠(e.g., レコード売上枚数、インターネットでのダウンロード数)

お察しかもしれませんが、「依拠性」の証拠を集めることは大変であり、余程の有効な証拠を大量に集めなければ、「依拠性」のハードルをクリアするのはかなり難しいです(^^;)

なので、たとえ曲が似ていて「楽曲の同一性・類似性」の要件をクリアしても、「楽曲の依拠性」の要件がクリアできないことで、裁判で負ける事案が結構あります。

さてさて、前回のブログで「オジーの“Zombie Stomp”がArmored Saintの“Tribal Dance”に対して、パクリの問題になるか?」問題提起させてもらいましたが、仮に、Armored Saintがオジーを訴えても、Armored Saintが負ける可能性が高いと思います。

最大の理由は、オジーの“Zombie Stomp”が収録されているアルバム“No More Tears”のリリース日(1991年9月4)とArmored Saintの“Tribal Dance”が収録されているアルバム“Symbol of Salvation”のリリース日(1991年5月14日)とが僅か4カ月と非常に近く、「依拠性」の要件をクリアできない可能性が高いからです。要するに、オジー(或いは、ザック・ワイルド)が、“Zombie Stomp”を作成した時期に、Armored Saintの“Tribal Dance”の曲を知っていた可能性は低いと思われ、“Tribal Dance”を元に曲を作ったことは考え難いからです。

そんなわけで、残念ながら、もしArmored Saintがオジーを訴えた場合は敗訴すると思われますが(笑)、“Tribal Dance”が収録されている彼等のアルバム“Symbol of Salvation”は、正統派メタルの名作ですので、本日は、そのアルバムからの素敵な曲“Reign of Fire”をご紹介して、締めたいと思います。
本日もブログを読んでいただき、ありがとうございました。